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2019-04-06 山本晋也監督、渡辺俊雄元アナと古今東西の名作映画を語る

映画に見る社会⑨ 話題の映画から現代社会をウォッチング。今回は番外編。
written by 塩こーじ


●埼玉県草加に山本晋也監督来たる!

今回は番外編で、映画関連のイベントを紹介します。

埼玉県草加市の中央公民館ホールにて、映画監督の山本晋也氏と元NHKアナウンサーの渡辺俊雄さんが古今東西の名作映画をセレクトし、その魅力を語り合うトークショーが開かれました。

僕の地元から目と鼻の先なので、さっそく会場に足を運びました。場内はほぼ満席、おふたりの人気の高さがうかがえます。

今年80歳を迎えるという山本氏は1965年に監督デビュー、お弟子さんには『おくりびと』の滝田洋二郎監督、『パッチギ!』の井筒和幸監督らがいるそうです。僕個人としてはなんといってもテレビ朝日の深夜番組『トゥナイト』レギュラーの印象が強いですね。

いっぽう渡辺氏はNHK退局後はここ草加の市民大学で映画講座の講師などをつとめています。

映画について超ベテランの二人が選んだ作品は……

●『第三の男』と亡き弟の思い出

山本監督がまず選んだのはオーソン・ウェルズの『第三の男』。

この作品にはペニシリンが重要な小道具として登場します。

監督は戦中戦後の貧しい時代に弟さんを亡くし、そのときの医者の「ペニシリンがあれば助かったのに……」というひと言が忘れられず、ペニシリンが出てくるこの映画が印象に残っているのだそうです。

舞台に用意されたスクリーンには映画のワンシーンも流され、より映画の魅力が理解できました。

●娘から父に贈ったアカデミー賞

続いては1981年製作のアメリカ映画『黄昏』。現代にも通じる親子の確執をテーマにした作品で、ヘンリー・フォンダが老いた父親、キャサリン・ヘプバーンがその娘を演じました。

映画はヘンリーの実の娘、ジェーン・フォンダがプロデューサーをつとめ、この作品でヘンリーはアカデミー賞を受賞しました。二人のあいだにも映画さながらの確執がありましたが見事にそれを乗り越え、父親にアカデミー賞をプレゼントしたというエピソードが語り草になっています。


●市川崑『東京オリンピック』の撮影にも参加

1964年に開かれた東京五輪では市川崑監督の『東京オリンピック』という記録映画が撮影されました。助監督だった山本監督もスタッフとして参加、砲丸投げ選手の練習風景を撮影しました。市川崑監督には「とにかく選手のクセを撮るように」と指示を受けたそうです。

来年の東京五輪のドキュメンタリー製作には「あん」や「萌の朱雀」の河瀨直美監督が就任。山本監督も彼女に撮影についてこまかいアドバイスをおくっているそうです。

●『おくりびと』アカデミー受賞ウラ話。

山本監督の愛弟子、滝田洋二郎監督の『おくりびと』はアカデミー賞の栄冠を射止めました。

滝田監督はアメリカでの授賞式にも出席、山本監督は英語で受賞のあいさつをするよう勧め、滝田監督はアドバイスどおり、苦手な英語でスピーチを披露しました。

滝田監督はオスカー像を持って山本監督と渡辺氏の番組にも出演、山本監督もオスカー像を持たせてもらったが、とても重かったということです。

●名セリフの宝庫『男はつらいよ』シリーズ

最後は山本監督、渡辺氏がそれぞれ、『男はつらいよ』シリーズの作品からお気に入りのセリフを紹介。名作喜劇シリーズだけあって人情にあふれたセリフの宝庫です

会場のお客さんからも「寅さん映画の3作目、寅次郎のセリフのなかに草加の地名が出てきますよ
と声がとび、地元の人ならではの雑学に山本監督らも脱帽の様子でした。

●草加は山本監督と縁が深い?

草加と境を接する東京都足立区に西新井という町があります。草加と同じ私鉄で結ばれ、急行でひと駅の距離です。

山本監督は戦争中、この西新井に疎開していて、そこで終戦を迎えたとのこと。この近辺とは意外な縁があるようです。

「草加はせんべいが名物。最近は機械で焼くが、やはり醤油をかけて炭火で焼いたほうがおいしいね」と山本監督は最後にサービス精神あふれたコメントで締めくくり、会場から拍手が起きていました。

せんべいや旧街道の松並木など、名物も多い埼玉県草加。いつの日か山本監督にこの街を舞台にした映画を撮ってもらいたいものです。

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